《MUMEI》

そう尋ねると、2人の少年達はお互いの顔を見合わせ、微笑んだ。

―だっておねーさんは、お菓子をくれたから。

―俺達だって鬼じゃない。ルールは守るさ。

お菓子、ルール…。

…ああ、そうか。確かに仲間達は彼等にお菓子を…いや、『お供え』をやらなかった。

だから見逃してはくれなかったんだ…。

―早く帰りなよ。大丈夫。おねーさんは無関係なんだから。

「…そういうワケにはいかないでしょう?」

この町へ来たことは、いろんな人に見られている。

―いや、そうなんだ。お前はここには来なかった。来たのはあの6人だけだ。

「そんなことがっ…!」

思わず顔を上げて、思い当たった。

この町の人は、地元の神様を大事にしている。…ならば、そういう事実もありとされてしまうんだろう。

「…分かったわ。帰る」

ぎゅっと唇を噛み締めながら言うと、明るい少年が大きく頷いた。

―今日のことはできれば忘れた方が良い。一度は見逃すルールがあるけど…二度目はないよ?

笑顔ながらも、目が笑っていない…!

「っ! 分かったわよ! もう二度と、ここへは来ない! さようなら!」

アタシは2人の少年の間を通り、道を歩き出した。

けれど…どうしても言っておきたいことがあって、どうしようか迷った挙げ句、やっぱり立ち止まり、振り返った。

―あれ? どうしたの?

―早く行け。電車に間に合わなくなるぞ。

アタシは息を吸って、顔を上げた。

「いっ一応アタシを助けてくれて、ありがと!」

大声で言うと、今度はすぐに道を走り出した。

遠ざかるアタシを、2人はしばらくキョトンとした表情で見ていた。

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