《MUMEI》

『神が隠した』事件―。

永久に解けるはずの無い謎は、アタシという存在が知ってしまった。

…そう、あの大地主の血筋の者として。

もしかしたらアタシだけ見逃してくれたのも、少年達は気付いていたからかもしれない…。

アタシは日記を元の場所に戻し、蔵を出た。

そして表のお店へ行き、頼んでいた物を受け取った。

大きな紙袋の中には、お饅頭やアメ、金平糖などウチの店の主力商品の詰め合わせだった。

それを持って、アタシは電車に乗り込んだ。

…結局、6人は行方不明となった。

警察に事情聴取されたけれど、アタシはあの日、別行動を取ったことにした。

町の人達もアタシという存在を否定したことから、容疑をかけられることは無かった。

だから、お礼に行かなければならない。

あの2人に。

先祖の心を表した、この和菓子を持って。

…きっと待っている。

でももしかしたら…和菓子なんて飽きた、と言われるかもしれない。

だから背負っているリュックには、コンビニで買ったたくさんのお菓子が入っている。

もしかしたら、向こうへ引き摺りこまれるかもしれない。

だけど不思議に心は落ち着いていた。

あの2人とずっと一緒にいられるのなら…と思えるアタシは、すでに人でないのかもしれない。

体は現実にここにあるけれど、心はすでに…向こう側にある。

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