《MUMEI》
残酷なキス
わたしの好きな人は、とても残酷。

わたしの気持ちを知って知らずか、いつも恋愛相談をしてくる。

「オレ、好きなコできたんだ」

「うん」

「でもさ、どうやったら近付けるんだろう?」

「そういう時はね…」

わたしは笑顔で恋愛相談に乗る。

そうして上手くいけば、心から喜んであげる。

…それが、彼がわたしに求めることだから。

それがわたしの役目だから。

そうすることで彼の側に居続けられるなら、わたしはいくらでも努力を惜しまないから。

辛くないのかと聞かれれば、心が引き裂かれるほど辛い。

でも同時に彼の為になれることが、とても嬉しかった。

「なぁ、今度彼女の誕生日なんだ。プレゼント選ぶの、付き合ってくれよ」

「良いわよ。どこで買う予定?」

彼女へのプレゼントを買いに行く時、彼はいつもわたしを頼ってくれる。

わたしの選ぶプレゼントは、彼女達がスゴク喜ぶらしい。

だから学校が終わった放課後や休日に、彼と二人っきりで出掛けられるのが嬉しかった。

別にやましいことをしているワケじゃない。

こんなのどこにでもありそうなことだ。

今回は休日に、駅前のデパートで買うことにした。

そこのデパートに入っている雑貨店が、彼女のお気に入りらしいから。

「彼女、髪が長かったわよね?」

「うん、腰まで伸びてる。サラッサラのストレート!」

彼は嬉しそうに説明してくれる。

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