《MUMEI》

「じゃあヘアピンなんか良いんじゃないかしら? 流行のシュシュとかも喜ばれそうだから、いくつか買ってあげたら喜ぶわよ?」

女の子達の群れの中に入って、いくつか選ぶ。

彼は嬉しそうに、選んでいる。

「あっ、そうだ。お礼として、何か一つぐらい買ってやるよ」

「良いわよ。その代わり、彼女に良いもの買ってあげなさいよ」

「そんなワケにはいかない! ホラ、どれが良いんだよ。選べ!」

何てエラソーなんだろう。

…でもそういう子供っぽいところも、愛おしいと思える。

真っ直ぐで純粋。

わたしの汚い心なんて、何も分かっていない。

そこが憎らしくて、とても嬉しい。

わたしは棚を見上げ、少し高い所に飾ってあるヘアピンを指さした。

「アレなんてどうかな?」

ピンク色のラインストーンで作られている2つセットのヘアピン。

「ああ、アレだな?」

彼は背後からわたしに覆いかぶさるようにして、背伸びをして、ヘアピンを取った。

…その時背中に感じた彼の体温と匂いに、心臓が痛いぐらいに高鳴った。

「…ああ、良いんじゃないか? コレにする?」

「うっうん。それにする」

彼は嬉しそうに笑った。

わたしの赤くなる顔に、気付かぬまま。

彼女へのプレゼントと一緒に、ラッピングまで頼んでくれた。

「ほらよ」

「ありがと。嬉しいわ」

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