《MUMEI》 …そして、彼女とは上手くいっていたと思っていたのに。 一ヵ月後。 「えっ? 別れた? どうして?」 「ん〜。何か付き合ってみて、理想と違ったっていうかさ。まっ、冷めたってカンジかな? 相手もすぐに納得してくれたし」 …彼女とは何度か会っていたけど、幸せそうだった。 なのに二人して、合意して別れた? にわかには信じられないけど…。 「そう…。まあ元気出してね? また何かあったら、相談に乗るから」 「うん! もちろん! 頼りにしてっから」 …その時のわたしは、上手く笑えていただろうか? 少しでも彼を騙せているのなら、女優モノだ。 しかしそれからというもの、彼は彼女を作ったり、別れたりを繰り返していた。 そのせいか、あまり周囲の評判が良くなかった。 わたしは見兼ねて、注意を何度かしたけれど…。 「だって上手くいかねーもんは、しょーがないだろう? 口で言ったって、分からないもんなんだよ。こういうのは」 確かに恋人経験の無いわたしには、分からないことかもしれないけど…。 そういう言い方、無いと思った。 わたしがこんなに傷付いていること、分からないのだろうか? こんなに側にいるのに…。 わたしは彼の心が分からない。 彼はわたしの心に気付かない。 …苦しい。 息も出来ないぐらい、苦しい。 前へ |次へ |
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