《MUMEI》 夢の中の出来事 2アニマルは、静かに聞いた。 「マキ。どんな夢か覚えてるか?」 「覚えてるよ。倒木にあたしとオランウータンと並んですわって、いろいろ話したの」 「仲いいな」 「監禁された人質の気分だもん。腕力じゃ絶対かなわないんだから、紳士的に扱ってくれてるのに逆らう理由はないと思って」 アニマルは無言で川に目をやった。 「日本語で会話したのか?」 「ふふふ」マキは楽しそうに笑った。「そう。日本語で」 いつの間にか遠巻きに、皆はマキの話に耳を傾けていた。 「噂通り日本語でトークか」 「あたしも一応科学者だから、言われた。科学の暴走を止めろ。動物を殺すときに無念さはあるか。科学は、いわゆる神の領域を侵す愚をやってはいけない…」 「…リアルな夢だな」 アニマルが呟く。アイが痛そうな顔で聞いている。フランクも下を向いていた。 「あ、あと、プロレスのチャンピオンだって自慢してた」 アニマルだけでなく、皆バッと顔をマキに向けた。 「チャンピオンか。なるほど」 マキは笑顔で語る。 「長い不思議な夢だった。目が覚めたら木に縛られていて、オランウータンに睨まれて、日本語で哀願してもキーキーしか言わないし」 「怖かったか?」 「生きた心地しなかったよ。だからアニマルの顔が見えたときは、また夢かと思った」 「……」 前へ |次へ |
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