《MUMEI》

世良の顔が、少しだ
け明るくなったので
天童は、手を振り別
れを告げる。

『じゃ、僕行くね』


世良は、フッと笑い
頷く。

『ああ、疋田によろ
しくな!』

その言葉に、にんま
り顔で頷く天童。

『世良!ファイト!


天童のエールを受け
た後、世良は歩き始
めた。

その時、世良の携帯
が着信音を奏でる。

…もしや、総一郎?

淡い期待を胸に着信
画面を見る。

ーー神品英人ーー


『ピッ…はい…』


『あっ、世良?さっ
きは悪かったな。大
丈夫だったか?』


『いや、平気だよ。
神品って、意外と心
配性なんだな、わざ
わざ電話までくれて
…』


『あー、てかさ、お
前に伝えたい事があ
ってさ…隆がね、東
の態度が変だったの
は、勝山先輩のせい
じゃないかって言っ
てるんだよ。』


『え?なんで?』

神品は、二人が険悪
な話し合いをしてい
た事を告げた。


『だから、東は多分
勝山先輩に何か言わ
れたんじゃないかと
思うんだ。』

『……』

神品の言葉に無言の
世良。

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