《MUMEI》
鬼神と呼ばれし男
「戦いの後に飲む葡萄酒は、最高だぁ!なぁ、あんたもそう思うだろ?ラグナぁ…。」


酒場で老剣士が、黒い鎧を着た銀髪の青年に絡む


「ああ…」とだけ呟いて青年は、ジョッキに注がれた葡萄酒を喉へと流し込んだ



狼を想わせる風貌を持つ青年は、酒を二つ注文し一つを老剣士の前へと置いた


「奢りだ。飲みな…。」


「へぇ…珍しい事があるもんだ。有り難くいただくぜ。」

喉仏を動かしグビグビと酒を飲み干す老剣士

気持ちがよいほどの飲みっぷりに青年は笑みが浮かべた



「あんたの笑顔を初めて見たぜ。機嫌がいいのは、今回の野党討伐が上手くいったからかい?…鬼神にも、人間らしい心があるんだねぇ」


老剣士が茶化したように笑う

青年の笑みが消えたのに気付くと、老剣士は、慌てて取り繕う


「へへッ…わかってるよ。冗談さ。百戦練磨のあんたが、あれぐらいの仕事で喜ぶはずないじゃないか。この老いぼれに聞かせてくれないか?何かいい事あったんだろ?」



しばらく沈黙が続いたが青年は、ポツリと問いに答えた


「…俺の仲間が帰ってくるんだ。命より大事な仲間だ…。」


青年は、再び笑みを浮かべた

その笑顔は、戦場の鬼神と呼ばれる男の笑顔とは思えぬほどの優しいものだった…



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