《MUMEI》 僕はそれまで恋愛をしたことが無かった。 現実には興味が持てず、ゲームを趣味としていた。 けれどオタクというほどではなく、ただ淡々とゲームをこなしていただけだ。 それでもゲームの量が本棚一つ分となると、やっぱりオタクと言えるんだろう。 その大半が恋愛シュミレーションと言うのも、輪をかける。 だからゲームの中の女の子に心ときめかせることがあっても、現実世界では一切無かった。 けれど彼女を一目見た途端、感じてしまった。 運命を―。 彼女とは合コンで出会った。 イタリアレストランを予約しての合コンだった。 そこへ少し遅れてきた彼女。 大学生とは思えないほど可愛らしい服装と容姿をしていた。 「遅れてゴメンなさい!」 申し訳なさそうに上目遣いで謝る姿にも、胸がときめいた。 彼女は偶然にも、僕の向かいに座った。 自然と話しかけられる位置だったから、嬉しかった。 最初は軽い挨拶から。 そしてお互いの大学のことに話は移った。 彼女は有名お嬢様大学の2年生だった。 僕の通っている大学名を言うと、彼女は目を丸くした。 「スッゴイです! あそこの大学、超難問なんですよね?」 「まっまあ僕のとりえは勉強だけだから」 僕は彼女の驚く表情が見たくて、幼稚園からの名前を言った。 「だからエリートなんですね。将来は何になるんですか?」 「うん、一応弁護士目指しているんだ」 「カッコ良いです!」 前へ |次へ |
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