《MUMEI》

僕が何も言わずとも、彼女は全てを察してくれていた。

どんなワガママを言っても、笑顔で受け入れてくれた。

だから…告白した。

「僕、キミが好きなんだ。その、もし良かったら結婚を前提に付き合ってくれないかな?」

「結婚を前提に?」

「うん! 付き合うなら、真面目に真剣に交際したいから」

真っ赤な顔で僕が言うと、彼女は涙を浮かべながら笑顔になった。

「…嬉しい。その言葉、待ってたの」

「ほっ本当に? 本当に僕なんかで良いの?」

正直言って、僕の容姿は平凡だった。

どこにでもいて、集団の中では埋もれて消えそうなぐらい普通。

会話も彼女を楽しませるような内容はあまり言えない。

せいぜい今まで得た知識を語るぐらい。

今まで人付き合いがあんまりなかったせいか、口下手になってしまったことを悔やんでいた。

だけど彼女は頷いてくれた。

「そんなあなたが良いの。わたしも、あなた良い」

そして僕の目を見て、ハッキリ言ってくれた。

「っ! ありがとう! 必ずキミを幸せにするよ!」

「うん。信じているわ、その言葉」

その日から僕は変わった。

絶対に弁護士になる為に、さまざまな勉強をはじめた。

ただ試験に受かれば良いというものじゃない。

人付き合いが一番難しいのだ。

だから社交性を学び、人間関係を学んだ。

その後の二年は、僕の人生の中で一番充実していた。

勉強も人間関係も、そして彼女との付き合いも、全てにおいて宝物と言える経験を積んだ。

そして僕は見事に弁護士の資格を取ることができた。

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