《MUMEI》 「分かりました。ではお嬢さんをいただきます」 「ええ、どうぞ」 彼女の母親からは賛成を得た。 僕の両親は最初は渋い顔をしていたけれど、彼女の母親が経営する会社の名前を聞くと、コロッと態度を変えた。 …この時ほど、両親を恥ずかしく思ったことはない。 けれど一応両家の了解を得たということで、僕らは結婚することにした。 彼女の母親が費用を全額出してくれたおかげで、結婚式も盛大に行えた。 しかも二人の新居も、彼女の母親が用意してくれた。 何でも知り合いの人が持っているマンションなので、家賃も格安にしてくれた。 「…こんなに幸せだと、逆に不安になるな」 「どうして? みんなに祝福されて、嬉しいでしょう?」 「うん…そうだね」 新居のリビングに、二人肩を寄せ合っていた。 「あっ、ねぇ、子供のことなんだけど…」 「えっ!? できたの?」 「まだよ。でもいつ頃ほしい?」 「いつ頃って、そうだな…」 僕は少し考えた。 まだ弁護士になったばかりで、覚えることやることは山のようだ。 そして彼女との新婚生活も、できればもう少し味わっていた。 「…できれば5年ぐらいは後回しにしないか? まだ父親になる覚悟ができていないんだ」 「5年…となると、27歳ね。うん、わたしは構わないわ」 「ありがとう!」 僕はぎゅっと彼女を抱き締めた。 「でも…」 前へ |次へ |
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