《MUMEI》 「それじゃあ、寝室へ行きましょう」 僕は逸る彼女に手を引かれ、寝室に入った。 子供ができれば、彼女をめいっぱい愛することが難しくなる。 だから後悔しないように、しばらくはガマンできるように、彼女をたくさん愛した。 夜が更け、いったん休憩することにした。 「子供は女の子と男の子、どっちがいい?」 ベッドの中で魅力的な笑みを浮かべながら、彼女が聞いてきた。 「僕はどっちでも良いな。でもまあ望むならキミに似た美人さんで、僕の成績優秀な部分を引き継いでくれるなら、どちらでも構わないよ」 「ふふっ。わたしもよ」 僕の首に腕を回し、彼女は耳元に唇を寄せた。 「…ねぇ、覚えてる? わたしを必ず幸せにする約束」 「もちろんだよ」 「わたしの今の望みは、子供を生むことなの」 彼女の唇が肌に触れながら、ゆっくりと首元に下りる。 「元気で立派な子供を産むこと…。その為に、協力してくれる?」 「もちろんだよ。僕にできることなら何でも」 本心から出た言葉だった。 彼女はニッコリ笑うと、歯を見せた。 まるで肉食獣のような歯に、思わず背筋が寒くなる。 「嬉しい! それじゃああなたの血・肉、食べさせてね」 「えっ…」 ガッ! 「ごぶっ!?」 彼女の歯が、僕の首に食い込んだ。 ゴキッ グシャッ ビシャッ そのままノドを食い千切られ、僕は死んだ。 前へ |次へ |
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