《MUMEI》 「はい、どうぞ」 笑顔でおにぎりの入ったお弁当箱を差し出す。 するとむんずっと掴み、がぶっと大口で食べる。 …豪快だなぁ。 「ん〜! うめぇ! コレ全部、アンタが作ったの?」 「まさか。手伝ってもらいながら、作ったのよ。まあレシピは全部アタシが作ったのだけど」 「へぇ」 頷きつつも、おかずにも手を伸ばす。 …にしても、本当によく食べるなぁ。 次から次へと手は伸び、そして口の中へ消えていく。 男子高校生の食べっぷりはよく見てたけど、彼はそれより上を行くな。 活躍する為に、力を溜めているんだろう。 「あっ、それじゃあアタシ、他の所も回るから…」 「え〜! ダメっ! オレまだ食う!」 そう言ってアタシの持つお弁当箱に手を伸ばす。 …そしてお弁当箱は、空になった。 そして彼は、他の部員達からブーイングを受けた。 昆布はアタシの手作りで、食べたかったという意見が多く飛び交った。 なのでアタシは早々彼から離れた。 ……これが高校一年の時の、彼とのはじめての出会いだった。 月日は流れ、アタシ達は高校三年生になった。 アタシは料理の腕を学校全体に認められ、料理部を設立して、部長を務めていた。 彼はサッカー部の部長として、全国大会に部員達を引っ張っている。 彼のおかげで、サッカー部は毎年全国大会に出られるようになった。 なので自然とアタシはサッカー部への差し入れが増えていき…。 前へ |次へ |
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