《MUMEI》

「いっいや、だからさっ。お前の料理を食って、惚れて。また食べる為にサッカー頑張ったんだよ」

…コイツにとって、サッカーよりも食欲の方が重要なのか。

「でもそのうち、お前に会うことが楽しみになって…。だから告白したんだ」

「とんでもない下心を隠していたのね」

「え〜でもさ、お前の料理を一生食べたいってのは、お前のことを愛しているからだろう?」

何でコイツはこういう恥ずかしいことを、サラッと言えるんだ?

まあ…嬉しいケド。

「だから、ずっと一緒にいたいワケ!」

そう言うとまた後ろからぎゅっと抱き締めてくる。

「でっでもアンタの進路はどうすんのよ?」

それによっては、離れ離れになる可能性だってある。

「もっちろん、サッカー選手! その方がカッコ良いだろう?」

「アンタ、サッカー選手、なめてるでしょう!」

「なめてなんかいないって。頑張れば、ワールドカップだって行けるんだからな! それにお前だって、サッカーやってるオレのこと、カッコ良いと思ってんだろう?」

「それはっ…そうだけど」

「だから、いつまでもお前にカッコ良いって惚れさせているオレでいたいワケ! それだけで十分だろ?」

「…まあね」

「サッカー選手の旦那さまと、料理人の奥さま! 理想の夫婦になろうぜ!」

あんまりに彼が幸せそうな顔をするから…とりあえず、一言。

「あのね。一つだけ言わせて」

「ん?」

トマトをドレッシングに付けて、彼の口に運んだ。

「アタシがアンタに惚れたのは、アタシの料理を誰よりも美味しそうに食べるからよ!」

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