《MUMEI》
VS 4 Clothes decorater
 「タマちゃん発見!もしかしてまた道に迷っちゃってたりする?」
高等部校内・廊下
卒業式も漸く明日に控えた最後の登校日
高等部に居ない筈の小森に、背後から声を掛けられた
「ち、違うもん。って、なんで華が高等部に居るの?」
不思議に思い問うてみれば
「ああ、ソレね。ちょっとこっちの先生に用があってね」
持参してきたらしい資料を岡本へと見せてくる
「そうなんだ」
意外と教師職を真面目にしているのだと意外に思っていると
「で?タマちゃんは何所に行く途中だった?」
「わ、私?自分の教室に行く途中だったけど……」
何となく口籠ってしまえば小森の笑みが顔の間近までより
何かを窺うかの様に顔を覗きこまれる
「タマちゃんの教室て何所?」
「え?」
「また迷子なんかになっちゃったら困るでしょ。だから、送ってあげる」
痛い処を衝かれ返す言葉が無い岡本
素直に自身のクラスを伝えると
小森は小さく頷いて岡本の手を取った
「は、華!?」
いきなりのソレに驚く岡本
辺りの視線をやはり集めてしまい、慌てる事を始める
だが小森は気にする様子もなくそのまま
途中、職員室の前を通りかかり
「先に僕の用事済ませちゃっていい?すぐ終わるから」
「うん。解った」
「此処で待っててね。うろうろしちゃ駄目だよ」
迷子になってしまう事を示唆され
岡本は言い返す言葉もなく、素直に頷いて返していた
「よし、いい子。じゃ、行ってくるね」
そう言って小森が職員室へと入っていくのを見届けると
岡本は深々しい溜息を一つ
「……もう、情けないなぁ」
一人事に愚痴り、また溜息をついてやれば
「情けないって、何の事?」
不意打ちに小森が肩越しに顔を覗かせてきた
用事は早々に済んだらしく、突然に現れた小森に
岡本は悲鳴を上げ後ずさる
「タマちゃん、それ驚き過ぎ」
流石の小森もその驚きっぷりに困った様な顔で
様子を窺うかの様に更に顔を近くに覗きこんでやった
「だ、だからそんなに顔くっつけないで〜!!」
近すぎるソレに顔が赤くなり更には動悸もひどい動揺してばかりの岡本に
「ちょっと揶揄い過ぎちゃったかな」
ごめんね、と小森は微かに肩を揺らす
そんなやり取りを交わして丁度
教室へと到着していた
「はい、到着」
「あ、ありがと……」
「じゃ、僕も用事済んだし帰るけど。帰りは一人で帰って来れる?」
「が、頑張る……」
頼りのない返事を返せば
小森はやんわりと笑み、そして岡本の頭の上で手を弾ませると
何故か教室の戸へと手を掛け
「どうぞ、お嬢様」
岡本を招き入れていた
行き成り過ぎるソレにクラス内は一瞬の静けさの後すぐ騒然とし始める
「ちょっ……、華!?」
「じゃ、帰る時間になったら携帯に電話して」
番号はこれ、と紙切れを岡本へと握らせ、小森はその場を後に
その背を一応は見送り洋室へと入れば
「ちょっと、環!今の格好いい人一体誰!?」
一斉にクラスメイトに囲まれてしまい
小森について問い質され、そのあまりの勢いに岡本はついたじろいでしまった
どう説明していいのか迷っていると
「はい、皆席に着いて」
丁度いいタイミングで担任が入ってきた岡本の周りにたむろっていた人だかりが仕方なく散っていく
長ったらしいHR、そして退屈な卒業式の予行練習を何とかこなし
漸くの放課後
下校時間になり、岡本はふと小森の言葉を思い出していた
「迎え、か。どうしよ……」
道に迷えばまた岡部から長々説教を戴く事になるだろう
だが態々迎えに来てもらうのも気が引けて
「……よし!」
気合いに拳を握りしめると、岡本は一人家路に着く事に
「大丈夫だよ。今までは一人で帰ってたんだもん。ちょっと道間違えたりしてたけど」
だから大丈夫、と改めて自身へと言いきかせながら寮までの道のりを岡本は急ぐ
急いで、居た筈なのだが
「……ここ、何処だっけ?」
やはり、道に迷ってしまっていた
自身の情けなさけなさに肩を落とし、立ち尽くしていると
「岡本さん?こんな所で何してるの?」
背後からの声
唐突なその声に向いて直れば、そこに居たのは担任
岡本は助かったとばかりに肩を撫で下ろすと、道に迷ってしまった旨を伝え
寮まで案内して貰う事に

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