《MUMEI》
イジワルなキス
あたしはキョロキョロと周囲を見回す。

よし! いないな。

そう思って教室に入ると…。

「おっはよー!」

「うぎゃうっ!」

後ろから抱き付かれた!

「いっいつ来てたのよ!」

「今だよ〜。キミの後姿を見て、つけてたんだ」

「すっストーカー!」

「人聞き悪いこと言わないでよ。そんなことを言う口は、これかなぁ?」

ぎゅむっ★

右側の頬をつねられた!

もう片方のアイツの手は、あたしの腰に回っていて、放してくれない!

「ちょっ、誰か助けてよぉ!」

クラスメート達に助けを求めるも、苦笑して見ているだけ。

こっこんなのイジメだぁあ!

「ととっ…。キミをいじるのも楽しいけれど、HRが始まってしまうね」

パッといきなり解放されて、あたしはよろめいた。

「じゃ、またね」

爽やかな笑顔で、アイツは自分の席に座った。

あたしはフラつきながらも、アイツの前の席に座る。

…何でこの席になったんだろう。

ああ、アイツのせいだった。

あたしの後ろの席のアイツは、悪魔だ。

意気揚々と高校入学して、ワクワクしながら教室に入ると…アイツがいた。

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