《MUMEI》 あたしは教室に早く入りたくて、走って来たのに、先にアイツがいた。 アイツは表面上は爽やかイケメンだった。 窓際で外の桜を見ていて、あたしが入って来たことに気付くと、ゆっくりと振り返った。 「あっ、はじめまして。一番乗りしたのね。早いわね」 息を切らしながらも、あたしは笑顔を向けた。 アイツは最初、無表情だった。 けれどいきなりズンズン近付いてきたかと思うと、あたしの頬を手で包んだ。 「えっ…」 「キミ…ボク好みの顔しているね」 キレイな声に、心臓が高鳴った。 「ええっとぉ」 「おもしろい顔をしている」 ぴきっ★ 思いっきり自分の顔が固まった音が聞こえた。 「あはは。おもしろい顔」 アイツは笑うと、いきなりぎゅむぎゅむとあたしの頬をつねったり、押したりしてきた。 「ちょっ…やめてよぉ!」 「その声もおもしろーい! 気に入った! 今日からキミはボクのおもちゃだ!」 なっ! 何ですとぉー! …てなことがあり、いつの間にやらここまできた。 アイツは相変わらず、あたしにだけイジワルをする。 理由を聞いても、 「おもしろいから」 と最上級の笑顔で言うだけ。 前へ |次へ |
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