《MUMEI》 それでも畑中は辺りを探して回る 「あのクソガキ……!」 だが何処を探せどその姿は見つからず 探し回る畑中も疲れてしまい肩で息をするようになる 取り敢えずは休憩にと一旦脚を止めていた 「……何やってるんだ。俺は」 走って乱れてしまった呼吸を整えながら一人言に呟く これ程までに一体何に執着しているというのか 自分自身の事だというのに、それが全く分からない 「……本当、らしくない」 自嘲気味に呟くと、畑中はまた探す事を始めた また何所かで座り込んでいるかもしれない、と 身を潜ませる事が出来そうな細い脇道を隈なく探して回る だが中々見つける事は出来ず、苛立ちに髪を掻き乱した その直後 以前、小林を探した時の様に 物陰から喉を擦る様な呼吸の音が聞こえてきた 「……手間掛けさせるな」 その音を頼りに小林を探し出せば やはり発作に蹲ってしまっている 「……何、しに来たんだよ?」 やはり向けられる、敵意と警戒心 毎度の様に交わしているその会話に畑中は当に飽き 何を言って返す事もせず小林の身体を抱え上げていた 「ちょっ……、テメェ、何する――!?」 「お前はそんなに道端で野垂れ死にたいか?」 「!?」 「大人しく、連れて行かれろ」 命令口調で言い切ると、それ以上何を言う事はせず 畑中はそのまま帰路へ 肩の上へと抱え上げられたまま身動きが取れない小林 その内、嗚咽が聞こえ、その肩が揺れ始めた 「テメェの手なんか、借りたくねぇのに……!」 「好きに言ってろ」 泣いている事は気付かぬ振りをし 畑中はそれ以上何を言う事もしなかった 自宅へと戻ると小林を寝室のベッドの上へ 「……水と薬、此処に置くぞ」 枕元へとソレを置いてやり、畑中が踵を返せば 浮くの裾が、微かに引かれる しっかりと掴まれてしまったソレを だが畑中は無理矢理に解く事はしないでおいた 「……テメェらの所為だ。テメェらさえ、居なけりゃ……」 「そうだな」 「……嫌い、だ。大嫌いだ……」 「ああ。解ったから、もう寝ろ」 耳に疎ましい拒絶の言葉すら今は適当にあしらい 小林の額へと宥めてやる様に手を触れさせる 穏やかな寝息が聞こえ始めたのがそのすぐ後で ソレを確認すると、畑中はやんわりと手を退けて だが不意に、ソレを小林の手が掴んで止めていた キョゼツとコンガン 小林の本音は一体どちらか その本意が畑中に解る筈もなく 畑中は小林へと視線を向けながら 深々しい溜息をつくばかりだった…… 前へ |次へ |
作品目次へ 感想掲示板へ 携帯小説検索(ランキング)へ 栞の一覧へ この小説は無銘文庫を利用して執筆されています。無銘文庫は誰でも作家になれる無料の携帯・スマートフォン小説サイトです! 新規作家登録する 無銘文庫 |