《MUMEI》
出会いは山の中
夏休みを利用し、わたしは父方の田舎に泊まりに来ていた。

山に囲まれその土地は夏でも涼しく、過ごしやすいからだ。

しかし…涼しいだけで、何も無い土地でもあった。

自然を相手に遊ぶ歳でもないわたしは、宿題を早々に終わらせ、毎日昼寝と散歩を繰り返していた。

ある日、山の中で昼寝をしようと思ったわたしは、山を登った。

最初は道があったのに、奥へ進むにつれ、獣道になっていく。

ほどほどでやめれば良かったものの、山には湖があると聞き、そこを目指してしまった。

だけど、と思う。

ちょっとボケてきた祖母の言うことを真に受けて良かったのか、と。

けれども進んでしまってからではもう遅い。

足が痛くなってきた頃、広場に出た。

そこは開けていて、でもそこには…。

ボロい神社があった。

思わずあんぐりと口が開くほどのボロさ。

人がこの神社を忘れ、何十年は経っていること間違い無しのボロさ。

わたしはけれども近寄ってみた。好奇心が強いことは自覚していた。

どうやらわたしは神社の敷地の横から出てしまったらしい。

獣道はいつの間にか、消えていたからまあこういうこともあるだろう。

この神社はボロいものの、鳥居やキツネの石像がある。

どうやらキツネを祀っていたらしい。

まあ山ならではの神社だろう。

昔から、ここら辺ではキツネに困らせられたと言うし。

わたしは肩を竦め、賽銭箱の前に来た。

一応、鈴もあるし引っ張る紐も繋がっている。

中の方は…と覗いて、わたしはビックリした。

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