《MUMEI》

一人の少年が、中で倒れていた。

…いや、寝ているのか?

よく見ると、胸が上下している。

けど…キレイなコだ。

わたしと同じぐらいの少年。

田舎には似つかわしくない、整った顔の少年。

胸が…少し高鳴った。

私は扉を静かに恐る恐る開け、中に進んだ。

埃臭く、床板は軋んだ。

ゆっくりと少年に近付き、顔を覗き込む。

ふと、気付いた。彼の顔の近くに、白いお面が転がっていることに。

手を伸ばしてお面に触れようとした時。

ぱしっ、と腕を捕まれた。

「きゃっ!?」

「…えっ? 女の子?」

無意識に掴んだように、少年はわたしを見て、眼を丸くした。

少年の色素の薄い眼と、キレイな声に心臓がうるさいぐらいに動いている。

「あっあの、ゴメンなさい。倒れていたから、具合悪いのかと…」

「…ああ、そうなんだ。ううん、寝てただけ」

彼は起き上がり、欠伸を一つ。

「あっあの…」

「うん?」

「ゴメンなさい。手を…」

腕は未だに捕まれたまま。

「ああ、ゴメン」

離された手は、とても冷たかった。…低血圧なんだろうか? 寝起きも悪そう…。

「で、キミは?」

「えっ?」

意味が分からず首を傾げると、彼はにっこり微笑んだ。

「ここに何しに来たの?」

「………迷ったの」

「…えっ?」

今度は彼の方が驚いた顔で聞き返してきた。

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