《MUMEI》 「湖があるって聞いて、そこに行ってみようと思ってたら、いつの間にか迷っちゃって…」 顔が赤くなるのが分かる。 「…ゴメン。ボクが寝ちゃっていたからだね」 少年が申し訳無さそうに呟いた。 「えっ?」 「あっ、ううん。それより永久村から来たの?」 「えっええ」 「なら送るよ。ちょうどボクも行こうと思っていたから」 そう言って少年は立ち上がり、お面を手に取った。 そのお面は…。 「狐のお面?」 「うん、白狐。神様とも言われている」 「ああ、この神社、狐を祀っているものね」 「…まあね」 少年は意味深く笑い、外に向かって歩き出した。 「あっ、自己紹介まだだったわね。わたしはりん」 「ボクは…コムラ。村まで話し相手、よろしく」 そう言って差し伸べてきたコムラの白い手を、私はおずおず握った。 ―ひんやりと、とても冷たい手だった。 前へ |次へ |
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