《MUMEI》
夢の中の出来事 6
ホークは席を立つと、マキに歩み寄っていった。
「マキ。久しぶりだな」
「こんにちは」マキは白い歯を見せた。
「相変わらず押し倒したいほどプリティだな」
「何言ってんの」マキは焦った。
「ちょっとビールを買ってくる。俺様はアニマルと違って人情の機微を知ってるからな」
「アニマルと違っては余計でしょう」マキは口を尖らせた。
「余計じゃねえ。ヤツは鈍感なのが男らしさだと勘違いしている図太い神経の野蛮人だからな」
「悪口言い過ぎ」マキはホークの肩を殴った。
「野蛮人はアウトローにとっては誉め言葉だ。試しにアニマルに言ってみな。よう野蛮人て。GAHAHAHA!」
ホークが去ると、マキは呟いた。
「言えるか」
マキは思い直してキュートなスマイルを浮かべると、アニマルのもとへ行った。
「こんにちは」
「元気か?」
「ええ」マキはアニマルの隣にすわった。「これを渡したくて」
アニマルは、マキがテーブルに置いたバッグの中身のものを、無造作に取り出した。
洗濯したTシャツが入っていた。
「ああ、これか」
「あたしが水着姿で恥ずかしがってるときに、素早く貸してくれて、凄く嬉しかったよ」
「わざわざ返さなくても、パジャマ代わりにすれば良かった」
マキは赤い顔で聞いた。
「いいの? あたしにプレゼントしてくれる?」
「構わんぜ」
「やったあ!」マキは日本語で呟いた。「毎晩アニマルに抱かれよう、キャー」
「日本語か。何て言った?」
「独り言」マキは輝く笑顔でアニマルを見つめた。「アニマルと初めて会ったとき、あたしに質問したよね」
「質問?」
「なぜ科学者になったのかって」マキは明るい笑顔で言った。
「・・・ああ」アニマルは忘れていたが、言ったことは覚えている。
「あたしは、オランウータンから聞いたことを、胸に抱いて頑張るつもり」
アニマルは穏やかな表情でマキを見つめた。

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