《MUMEI》 茫然とする視界の中、 やたら観客の歓声が大きく聞こえる。 何…何が起こったんや? 幾ら瞬きしても光景は同じ。 ゴールに収まるサッカーボール。 一端地面に着地して飛び跳ねたボールの軌道は、 俺の予想に反してゴールとは真逆だったはず。 なのに…なんで。 その瞬間、ふわりと暖かいものに包まれる。 「やったな賢史!! ナイスアシスト!」 「先輩……?」 これ以上無いほど、 飛び切りの笑顔を向ける先輩。 そうだ思い出した。 真逆に跳ねたボール。 そのボールの軌道を先輩が変えてくれた。 ゴールを決めてくれたんだ。 そうと分かった途端、 じわじわと嬉しさが脇上がる。 俺は抱き締めて俺に頭をグリグリさせる先輩に、 笑顔を向けた。 「先輩、ナイスゴール!!」 2人してヘラヘラ笑いながらガッツポーズを交わし、 更にハイタッチする。 夢じゃない。 現実だ。 高鳴る鼓動を抑えることも出来ず、 俺はただ無邪気に喜んだ。 前へ |次へ |
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