《MUMEI》
え、これって夢?
だんだん家が近くなってきたとき、悠一は突然足を止めた。



「悠一?どうしたんだ?」

「…あのさ、まだ時間あるか?」

「まぁ、少しなら」

「じゃあさ、ちょっと聞いてほしいことあんだけど」

「うん?」



僕が返答をすると、悠一は近くにあった原っぱへと移動した。そして、ごろんと仰向けに寝転がる。僕はその隣に腰掛け、悠一と同じように星空を眺めた。



「…で、何?聞いてほしいことって」

「あの、さ、俺、好きな奴がいんだ」

「…え?」



悠一の一言に、思考は完全に停止した。
今、なんて言った?好きな人がいる?悠一に?え、ヤダ。そんなの聞きたくないよ。嫌だ嫌だ嫌だ!!
そんな僕の思考なんか関係なく、悠一は続きを話す。



「でさ、そいつ、すっげー口わりぃの。気も強いしさ。直ぐ俺のこと怒鳴りつけるし、たまに殴るし」

「…じゃあ、なんでその子が、好きなんだよ」

「ん〜、なんだかんだいって、やっぱり可愛いとこあるし。寂しがりやなとことか」

「そう…」



悠一は一体何が言いたいんだろう?こんな好きな人の話を僕に聞かせて、何が楽しいんだろう?僕は、今にも泣きそうなのに…



「でさ、梨央に聞きたいんだけど、そういう子にはどうやって気持ち伝えたらいいと思う?」



は?何で僕にそういうこと聞くの?そんなの、自分で考えればいいじゃん
でも、僕の口からは嘘ばかりがついて出る。



「素直に好きって言えば?そう言って抱きしめてあげればいいじゃん」

「え、いきなり抱きしめたら、それこそ殴られるだろ」

「大丈夫だよ。悠一なら。僕、応援、してるから」

「ん。ありがとな」

「おう。早く告っちまえよ。可愛い子なら、早くしないと他に取られちまうぞ」

「まぁ、大丈夫だとは思うけど、確かに早く言った方がいいかもな」



嫌だ。言ってほしくなんかないよ。他の子に好きだなんて言わないで!誰かの元になんか行かないで!!



「…梨央」

「何?早く言ってきなよ」

「うん。…梨央、好きだよ」

「え…?」



次の瞬間には、僕は悠一の腕の中だった。僕の思考は再び停止。だって、こんな、何が起こってるのか分かんない。何?悠一は今何て言ったの?



「…返事くらい、ちゃんとくれるよな?」

「……」

「おい、何固まってんだよ」

「だ、だって、え?何?何が何なの?」

「何テンパってんだよ。梨央のことが好きだって言ってんの!」



やっぱり聞き間違いじゃなかった!さっきの告白が事実だったと分かった今、僕の頭は完全にパニックを起こした。



「はぁ!?え、だって、さっきの、え!?」

「好きな奴の特徴言えば気付いてくれるかもとか思ったのに、梨央、まったく気付かねぇんだもん。それどころか、なんか途中から落ち込みだすし」

「そんなの、はっきり言わなきゃ分かんないよ…」

「だから、はっきり言っただろ。…で、どうなんだよ。返事」



多少呆れ顔で再度返事を求めてくる悠一。そんなの、もう決まってるよ








「…僕も悠一が好きだよ」

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