《MUMEI》

「ちゃんとファータ(パパ)とムッタァ(ママ)の言う事を聞くんだぞ」
「うん、シャンたしゃんにそっくりなファータと、あきらしゃんの言う事聞きます…」

素直な返事をしたくるみちゃんにキュンとしたのか、克哉さんはくるみちゃんをギューッと抱きしめていた。

あんなにも毎日顔を合わせているというのに…どれだけくるみちゃんが好きなんだろう。

僕もだけど。

「私へのクリスマスプレゼントがまだよ、サンタクロース…」

トリスタンさん、そう言えばこんなにお世話になったのにお礼とか用意してないのに気が付いた。

(どうしよう、このまま帰ってもらうのも何だし…)

そう思っているとトリスタンさんは突然、克哉さんの腕を掴んだ。

「な、何だ?」

それに戸惑う克哉さんはその腕を振り解こうとしていたが、トリスタンさんは半ば強引に克哉さんの腕を引っ張って外に連れ出そうとしていた。

「じゃ、ちょっとだけこのサンタクロース借りてくわね…すぐに返すから」
「何なんだ、トリスタン、ちょ…」

強引に腕を引かれて慌てる克哉さんに、トリスタンさんは僕に何かを言いたそうに目で訴えかけていた。

「はい、分かりました」
「あ…アキラι」

克哉さんはちょっと逃げ気味だったけど、トリスタンさんだったら安心して克哉さんを預けられるし。

「それに今日はトリスタンさんにお世話になりましたし…」
「ちょっと待てι」

それに、くるみちゃんもお風呂に入れて寝かせなきゃいけないし、ジェイミーとも積もる話もあったし、トリスタンさんを信頼して克哉さんを預ける事にした。

トリスタンさんに今日のお礼を言うと、引っ張られていた克哉さんに手を振って笑顔で見送ってあげた。



「ふぅ…やれやれ…」
「あれ、連れてかれたの?サンタさん」
「うん、トリスたんと一緒にどっか行っちゃったのぉ〜」

部屋に戻ると、ジェイミーがテレビを見ながらお茶をしていたので、僕もくるみちゃんを抱えながらその隣に座った。

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