《MUMEI》

「ケーキなの〜♪」
「お茶にケーキだけど、緑茶にチョコって意外と合うよね〜♪」
「へぇ〜…」

トリスタンさんの作ってくれたショコラのタルトはクリームが綺麗に飾り付けられていて、ドイツのお菓子というよりフランスのお菓子というカンジだった。


以前、克哉さんに聞いたのだけどトリスタンさんは家具屋さんのご両親と一緒にパリに住んでいるんだとか。

そのご両親というのは、子供が出来なくて養子としてトリスタンさんを引き取ったらしい。

トリスタンさんはフランス在住だからどことなくあのトレビアンというような雰囲気で、こんなに料理が美味しいんだなぁと、その話を聞いた時は妙に納得してしまった。

”トリスタン”という名前もフランスの古典的な名前で、あの”ロミオとジュリエット”の大昔のタイトルが”トリスタンとイゾルデ”だったぐらい古い名前らしい。

トリスタンさんのイゾルデ……。

「なぁなぁ、アキラ〜♪」
「あっ///」

変な事を考えてしまった///

「はい、あ〜ん♪」

ジェイミーから食べさせてもらったトリスタンさんのショコラタルトは、とっても美味しくほろ苦い味がした。


それに…あんなに強引なトリスタンさんは見た事が無かったから、きっと大事な用事があるんだろう。

「さっきはゴメンねくるみぃ〜僕、まだあんまりドイチュ(ドイツ語)話せなくて…」
「えへへ///じゃあおりぇと一緒にお勉強しよーねぇ♪」

ジェイミーがくるみちゃんにケーキを食べさせている様子を眺めながら、ジェイミーの好きなお茶を煎れた。

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