《MUMEI》

「あ、でも。」


「どうしたの?」


「やっぱシャワー浴びてくる。」


右手を上げて、立ち上がる将貴。


「別に気を遣わなくていいのに。」


「いや、由里香想像しろ。」


「へ?」


「汗臭い体で寝る。

俺のベッドが臭くなる。」


ここで将貴は眉間に皺を寄せた。


額にある傷が歪む。


「マジ勘弁だろ。」


「プ……。」


「なんだよ。」


吹き出しそうになるのを堪える由里香。


変なとこで几帳面なのよねぇ…。


「そう、なら私待ってるね。」


「お前シャワー浴びて来たのか?」


「うん。」


「そっか。」


そう言って将貴はバスルームへ姿を消した。

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