《MUMEI》
Normal Human
観客席。



ザワザワザワザワ…


「完全に聖龍ペースだな。」


ザワザワザワザワ…


「あらヒロ?


寂しそうね。


海南ひいきなわけ?」


ザワザワザワザワ…


「…別にそういうわけじゃね〜けど。」


ザワザワザワザワ…


「ま…
気持ちはわかるけどね。」


ザワザワザワザワ…













……………













超満員の観客席。


その中には、


二回戦で赤高に破れた西条高校の姿があった。


西条は市内リーグで海南と対戦しており、


25対11というスコアで負けている。


30分ゲームでこの点差はかなり絶望的な物である。


が、


それほどまでに自分たちを叩いた海南高校も、


聖龍高校の前に為す術なくやられている。


そして確認する自分たちの現在地。


全国という世界の遠さ。


それは西条の選手だけでなく、


その他の選手たちも痛感する遠い遠い世界だった。













……………













「ピッ!!」



ラインを跨ぐ海南。



「1本行くぞぉぉッ!!!!!」



試合はまだ序盤。


選手たちの気持ちはまだまだ切れてはいない。


ただ、


1人を除いて。



「…」



ドクンッ…!!



(何だ…?)

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