《MUMEI》

ボールは空中で方向を変える。


向かう先はゴール。


ただ山なりに投げられたかのように見えたボールには、


繊細で綺麗なスピンがかかっていた。


ボールは大きく曲がり、



ガコッ…



コロコロ…



ゴール下のバーに当たり、


その中へと吸い込まれた。












……………













「なっ…」



ドドドドドワーワーッ!!!!!!!!!



「何だあれ…」



ドドドドドワーワーッ!!!!!!!!!



「いや可能だよ!?


確かに球速を気にしないならボールを曲げるくらいできる…


できる…けど…」



ドドドドドワーワーッ!!!!!!!!!



「実際にあんなん決める奴がいるのかよ…」



ドドドドドワーワーッ!!!!!!!!!



「どんな心臓してんだ…?


準決勝だぞ?


ありえね〜だろ!!」



ドドドドドワーワーッ!!!!!!!!!












……………












ギャラリーは爆発。


試合を観戦していたクロ、


ヤマト、


恭介の3人でさえ、


そのプレーに興奮を覚えた。


それほどのシュートを今、


桜井は決めたのだ。


が、


もちろん狙ってそう何本も決められる物ではない。


桜井がこのシュートを公式戦で用いたのは初めてのことで、


練習試合でも2回しか決めたことがなかった。


試した回数は30を越えている。


つまり桜井は、


成功率1割以下のシュートを、


この場面で決めたのだ。



5対1。



早くも飛び出したスーパープレーに、


会場全体が魅せられていた。

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