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《MUMEI》 「あれ、華。もう起きてたの？」 翌日の早朝５時 どうしてかその時間に眼が覚めてしまった岡本 喉が渇き、水でも飲もうとリビングへと向かった時だった 其処にあるソファへと腰を掛け、何やら作業をしている小森と出くわし 「タマちゃんこそどしたの？こんな時間に」 作業に手を動かしながら、笑みを岡本へと向けてくる 「私は、何か眼が覚めちゃって。華は何してるの？」 その笑みに照れながら何とか返事を返し そして岡本は何気なく 作業を続ける小森の手元を眺め見た 何を作っているのか、改めて問うてみれば 「これ？これはね、ワンピース」 「ワンピース？」 「そ。今日の卒業式が終わった後、タマちゃんに来てもらおうかと思って」 言いながら、ほぼ出来上がっているそれを広げて見せ 岡本へと宛がってみる 「これ、私に……？」 「そうだよ」 「すごい。可愛い……」 「喜んでもらえたみたいで良かった」 「ありがと、すごく嬉しい。でも、今日の卒業式後って、何かあるの？」 何もこれと言って思い当たる事が無く、小首を傾げて見れば だが小森は何を居てやる事もせず、唯笑みを浮かべるだけ 「教えて、くれないの？」 「うん。まだ秘密」 「ケチ……」 頬を膨らませ、不手腐った様な顔をして見せれば 宥めてやる様に小森の手が岡本の頭を撫でる 「そんなに拗ねないで。この秘密はタマちゃんへのプレゼントなんだから」 「プレゼント……？」 「そ。だから楽しみに待ってて」 相変わらずの満面の笑みを向けられ それ以上何を聞く事も岡本は諦め ふと時計を見れば随分と時間がたち、登校時間に 「行ってらっしゃい。気を付けてね」 小森に見送られ家を出た 相も変わらず道に迷いながら何とか校舎まで辿り着けば 卒業式という事もあってか 普段とは違った雰囲気が其処に満ちていた 「そっか。今日で卒業なんだ」 何となく、その実感が薄くしかないのは 卒業後も此処に居残る所為なのかもしれない、と あの四人を思い浮かべ、笑みと溜息を同時に漏らしていた 「はいソコでマヌケ面晒してる奴、ちょっと止まりやがれ〜!」 ヒトい百面相を繰り広げていると 背後から平田の声が 岡本は思わず脚を止める、事はせず逃げる様に走り出していた 「おいコラ、タマ公！待てって言ってんだろうが!!」 「嫌〜！絶対ロクな事じゃないし！っていうか何で大吾が高等部にいるのよ〜!!」 「別にいーだろ！そんな事！兎に角止まりやがれ!!」 ソコはやはり男女の運動能力の違いか すぐさま距離を詰められ、背後から抱きこまれてしまう 「は、離して〜！ここ、廊下なんだから〜！」 「うっせ―野郎だな。少し黙ってろよ」 抱きしめられていた腕がそこで漸く緩み そして平田の手が今度は髪を弄り始めていた 一体、何なのか 綺麗に結いあげられていく様を眺めながら 岡本はだが訝しげな顔だ 「……よーし、出来た。これで完璧」 「なーに？大吾、何したの？」 「さぁな。後で自分で確かめな」 何かを企んでいる様な笑みを浮かべ 平田はその場を後にしていた 珍しくあっさりと帰って行った平田へ 岡本は訝しげな顔をしてみせながらも 教室へと取り敢えず入る 「あ、環！おは――」 友人たちからの挨拶が中途半端に何故か切れ どうしてか岡本の方をまじまじ眺めてきた 「何？どしたの？」 「ねぇ、環。アンタその頭どうしたの？何か凄い事になってるんだけど」 「すごい事？」 なんの事か分からず、岡本が首を傾げれば 友人が笑いを堪えながら手鏡を向けてくる ソレを覗きこんだ岡本は瞬間絶句 「な、何よコレ――!!」 「賑やかだね。色んな物付いてる」 「感心してないでよ！……大吾の奴〜!!」 様々つけられた飾りを大慌てで外し始めた 「っていうか、普通は付けられた時に気付くでしょ」 呆れた様な友人の声にも耳を貸さず ソレらを大体はずして見れば その古めかしい髪留めたちに、岡本は見覚えがある様な気がした 一度気にするとどうしても気にかかってしまい 平田を追いかけ問い詰めてやろうと岡本は踵を返す だが其処で丁度担任が入ってきてしまい その機を逃してしまう 普段より長いHRが終わり、漸く始まった卒業式 だが岡本は感慨に浸る事が出来ず 前へ |次へ |
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