《MUMEI》
少年と少女
目の前を無心に走る人々が通り過ぎる。
中にはまだ高校生ぐらいの少年少女も混じっている。
そしてその直後に、真っ黒な団体。
ユウゴとユキナは微動だにせず、その団体が過ぎるのをただひたすら待っていた。
「い、行ったか?」
苦しい姿勢のまま、ユウゴは小さく聞いた。
「行った、みたい」
ユキナも小さく応える。
それでも、二人は出ようとしない。
もしかすると、まだ誰かいるかもしれないからだ。
ユウゴはそっと顔だけ出して、様子を窺った。
大勢の足音が遠ざかる以外、変わった所はない。
どうやら全員行ったようだ。
二人は同時にホッと息を吐いた。
そして、のそっと隙間から出る。
「……助かった、ね」
「ああ」
足元には無惨に散らばった人体の数々。
その光景に吐き気が込み上げてくる。
「ユウゴ、平気?」
なるべく下を見ないように、ユキナが聞いた。
「あ、ああ」
グッと吐き気を飲み込みながら頷く。
そして、デパートの方を見つめる。
「なあ」
「なに?」
「あの中にさ、高校生か中学生くらいの男女がいただろ?」
ユウゴの問いに、ユキナは首を傾げた。
「そう?いたっけ?」
どうやらユキナは気付かなかったようだ。
「知り合いだったの?」
「ん、いや。けど、見たことあったような気がしたんだけど」
「ふーん」
頷きながら、ユキナもデパートの方を見た。
「行くぞ」
「うん」
二人は再び、地下鉄の駅を目指して歩き出した。
少しして、ドゥンと大きな爆発がデパートで起こった。
続いて小さな爆発が連続する。
まるで悪ガキが爆竹で遊んでいるかのような、空気の震えに耳を塞ぎながら、二人は歩き続けた。
間もなく、デパートは炎と煙をあげながら崩れ去っていった。
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