《MUMEI》 傷ついた絆時間が止まっているように見えた。 この空間には榊原と先輩、 俺しかいないように感じられる。 「これでコイツも終わりだな。」 先輩を見下ろす榊原。 残酷な言葉に怒りを覚えてもいいはず。 なのに俺は、 不思議とその感情は生まれてこなかった。 変わりに出て来たのは切なさ。 口調こそは残酷だが、 榊原の表情は悲しみに染まっていた。 意識の無い先輩の体を突き放すでも無く、 両手でしっかりと支えている。 どこでだろう。 どこで間違ったんだろう。 2人には言わずとも深い絆が感じ取れる。 俺の頬に一筋の涙が伝った。 やっぱりこの2人は望んでこんな仲になったんじゃない。 「榊原…さ…ん。」 歪んだ視界の中で、 榊原はこちらを向いた。 「…!?」 榊原は泣いていた。 そして再び先輩を見る。 「お前が…お前が悪いんだ。」 まるで自分に言い聞かせるような言葉。 俺はその光景を黙って見つめるしか無かった。 前へ |次へ |
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