《MUMEI》

「俺は…悪くない。

悪くない!」


さっきからずっと、
榊原は叫び続けている。


何かに怯えたように目を見開き、
先輩の両肩を支える手は震えている。


「逞が悪いんだ!」


「!!」


先輩の名を呼んでいるのは、
自然なことなのだろう。


名を呼び合う程の仲だったのか。


だったら尚更。


「なんでそんなに先輩を恨むんですか。」


仲を戻すことの出来ない程の何かがあるんだったら。


2人にはどうしようも出来ない問題なのなら。


俺がなんとかしてみせる。


そんな決意を胸に、
榊原に静かに問う。


「お前に言って何になる。」


榊原は噛み付くように、
そしてじっとりと俺を睨んだ。


「俺だって信じたくねぇよ……。」


悲しげに瞳を揺らし、
先輩を見下ろす。


ああ、この人はきっと今が本当の姿なんだな。


試合中の意地悪な顔が、
演技だったのに気付いた。


「逞……お前はどうしたいんだよ………






















俺から夢を奪って。」

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