《MUMEI》

「ハハッ、それは災難だったな。」


蓮翔から事情を聞いた豪田と神道は、
哀れな目を向けた。


「笑い事じゃねぇよ!

マジで怖かったんだから…。」


「へー、蓮翔に怖いもんなんてあったんだ?」


後ろから声が聞こえて振り返ると、
山村が立っていた。


「はい、次豪田な。」


先程ボックスの中へ入ってボールを打っていたため、
蓮翔の話しを聞いていなかった山村。


「何の話ししてたわけ?」


山村は豪田にバットを渡しながら、
興味津々で問い詰めて来た。


「やめてくれ、もう言いたくない。」


「えー、いいじゃんよぉ!」


「それよりも話すことがあるだろ。」


すると神道が神妙な面持ちで口を挟んだ。


「え?

なんかあったっけ?」


俺は必死で考え込む。


「はぁ…もう忘れたのか?

ほら、新コーチのこと。」


「あ…。」


一瞬にしてあの光景が蘇った。


“お前を鍛えに来た”

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