《MUMEI》

「じょ、冗談だろ?」


「アイツ、謹慎処分じゃなかったのか?」


「今日で解かれたんだ。」


驚いて声を上げる豪田と山村。


何も言わない俺に、
変わりに神道が応えた。


「嘘だろ……。」


唖然とし、
あんぐりと口を開ける山村。


「な、なんでまた?」


「俺達を鍛えに来たんだってさ。

何でも、アイツの夢は強い選手を世に出すことらしいしな。」


冷たい口調で淡々と口にする。


そうでもしないとまた怒りが込み上げて来そうだった。


「そんなこと余所でやればいいだろ。」


豪田は怖い顔をして掃き捨てるようにそう言った。


「俺、もうヤダよ。」


山村の悲痛な呟きはあの頃のことを指しているのだろう。


「大丈夫だ。

俺らは昔とは違う。」


「そうだ。

俺達はガキじゃないんだ。」


俺と神道だけが励ますように言った。


だがそれは、自分にも言い聞かせるため。


「そうだとしたら、
覚悟が必要だな。」


しっかりした声と共に豪田が言う。


何故か俺だけに顔を向けて。

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