《MUMEI》

《…言ウことキケ》


化け物の舌が鎌首を持ち上げた蛇のようにうねる


あれで僕を攻撃するのだろう…



覚悟を決めたその時…

化け物に異変が起こる


《…!?》


何かに気付き、一瞬、ビクッと震え、動きが完全に止まったのだ


ここぞとばかりに、勢いをつけた拳を眉間に叩き込む


骨と骨とがぶつかり、凄まじい音が響いた


その音を追うように、叫び声が響く


叫んだのは、僕だった


小指の骨が折れたのだ…


化け物の方はというと、グラリとよろめきはしたものの表情ひとつ変えやしない



青瓢箪のパンチなんかじゃあ、ダメージは受けないってか…


だが、一発ブチ込めた

これで悔いはない


いや、ない訳ではない


あるけど、今はない


そうでも思わなきゃ死にきれない…



体の力が抜ける


恐怖を乗り越えた反動だろう…



さあ、殺すなり人質にするなり好きにしろよと化け物に眼を向ける


おそらく僕の眼に生気はないだろう










化け物は、まだ
その動きを止めていた


そして、ポツリと声を漏らした…


《…ヤツが…来た》

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