《MUMEI》
父の決意
父さんが帰国したんだ

久しぶりに見る父さん

少し、痩せたかな?


父 「元気そうだな、翔太」

優しい笑顔で俺に話しかけて来たんだ

父 「合格、おめでとう」

「何があっても、翔太は真 っ直ぐ道を切り開くな」

「何より、元気な顔見れて 、父さん、うれしいよ」

翔太 「うん、…」

「顔が変になっちゃったけ どね」

父 「そうか?」

「気にならないがな」

「…少し、大人っぽくなっ たか?」

茶化すように、笑顔で言った父さんだった


たわいない会話をしながら焼き肉屋に行ったんだ


父さん、

俺に焼き肉、食わしとけば、満足するとおもってんだ

昔から、そう…


まぁ、…いいけどね…


父さんと、向かい合って、テーブルに座った

まだ、早い時間だからかな店内は空いてた


父さんの仕事は順調で
まだまだアメリカに居るんだって

俺、父さんに聞いたんだ

翔太 「俺に、弟か妹、居る の?」


父さん、俺を見て、少し間をおいてから話しだしたんだ

父 「…居たんだがな…」

「ダメだったんだ…」

「無事に、生まれなかった んだ」


流産したんだって…


母さんの呪いだったりしてね…


今は、一人で暮らしてるんだって

その女性とは別れたんだってさ


また、新しい女、居たりしてね…


何か、俺、物事真っ直ぐ見てないのかなぁ?

心が曲がってるのかな?

父さんの話しを聞いて、
こんな事ばかり、思ってたんだ


肉を食いだしてすぐ

父さんがビールを頼んだんだ

俺にも

父 「硬いこと言うなよな」
「飲めるんだろ?」


父さんと、酒を飲むなんて…

何か…なぁ…


俺、酒、あんまり飲んだ事無いし

酔っ払う前に、父さんに話しておきたい事があったんだ

学費や生活費の事

入院費やリハビリにも
たくさんお金使わせちゃったしね…


父 「金の心配はいらんよ」

翔太 「…そっか、ありがと 、父さん」

父 「東大生かぁ…」

「たいしたもんだなぁ」


翔太 「自慢になる?」

父 「そりゃあ、なるさ」

翔太 「んじゃ、御褒美ちょ うだい」

「俺、免許取りたいんだ」


父 「わかった、車も買って やる、何がいい?」


話し、早いなぁ

父さん、何で笑顔なんだろ
お金掛かる事ばかりなのに

総てを快諾してくれた父さんだった

けど

一つだけ、頼み事をされたんだ


母さんや姉さん達と会う

しかも、明日だって…


急な話しだよね

何だろう?

父さん、少し、恐い顔になったんだ

……

その日の夜

父さんと布団を並べて寝たんだ


父 「翔太…」

「父さんな、惨めで格好悪 い所見せる事になると思 うんだ」

「…笑ってもいいし」
「馬鹿にしてもいい」

「…本当の自分を、翔太に 隠さず見せる事になる」

「父としても、男としても 、父さんは、半端者なん だよ」

「…見届けてくれるだけで いいんだ…」

翔太 「…」

父さん、そう、言ったんだ

天井を見たまま


何か、決意があるのかな?

こんな父さんを、俺、初めて見るよ

……

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