《MUMEI》 「先輩?」 倉木先輩は意識を取り戻しても心ここにあらずといった感じで、 ぼーっと病室の天井を見上げていた。 「倉木先輩?」 やっと何度目かの問い掛けに反応を見せる。 目だけこちらを見て、 ようやく口を開いた。 「賢史……。」 「大丈夫っすか?」 「俺……?」 「病院に運ばれたんすよ。 軽い脳震盪(ノウシントウ)やって。 多分、いや絶対アイツらのせいですけどね。」 「そうか。」 口を尖らせて言う俺に苦笑し、 先輩は安心したようにため息をついた。 「念のため検査するらしいんで、 退院は2日後ぐらいになるって医者が言っとりました。」 「悪いな。 びっくりしたろ?」 「そりゃ、まあ。 あの……先輩…。」 拳を握り締めて、 ごくりと唾を飲み込んだ。 「ん?なんだ?」 「実は救急車が来るまでずっと…榊原先輩が倉木先輩を支えてくれとったんです。」 「……そうか…。」 アレ? なんで驚かないんだろう。 意外な反応に戸惑いを隠せなかった。 前へ |次へ |
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