《MUMEI》

「ここまで意味深なこと言っといて、
白切り通すつもりっすか?」


先輩の瞳を逃すまいと、
俺は必死で先輩の瞳を見続けた。


先輩も負けじと俺の瞳を見続ける。


暫く睨めっこの状態が続いた。


乾いた喉が口内に貼り付き、
息をするのさえ困難になる。


どれくらい長いあいだそうしていたか分からなかった。


ふとした瞬間に、
先輩が観念したようにフッと息を漏らした。


途端に目付きが優しくなり、
俺はいつの間にか緊張した体をほぐすようにホッと息をつく。


「そうだな……。

賢史はもう気付いてるんだろ?

俺が榊原たちが豹変した理由を知らないと言っていたが、
実は何か心辺りがあるということ。」


「はい。

何となく。



先輩は参った、と1つ呟くと、
再び俺の目を見た。


「多分これは誰かの陰謀によるものだと思う。」


「?

ど、どういうことですか?

黒幕がいるっちゅうことですか?」


「ああ、確信はないけど、
榊原たちは誰かに吹き込まれている。」

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