《MUMEI》

別にいつもの事だったが、あまりにも最近アキラがしてきてくれないのでこんな事でも少しドキドキしてしまった。

相手はトリスタンなのに。

「実は私ね……おじさんなんだ…」
「知ってる」
「そういう意味じゃないわよ!年はあんたと近いでしょ!」

俺は夏辺りで23歳になり、トリスタンはその一つ上だから24歳だ。

”叔父”…だったのか。

血の繋がりがあるという事はなんとなく口を滑らせた親父から聞いたのだが、従兄弟程度だと思っていた。

そう言われてみれば…トリスタンは子供の居ない夫婦の間に引き取られた子供だというのは知っていたのだが、それがどこの子供かという事まではマックスも教えてはくれなかった。

「叔父…という事は、親父と兄弟なのか…」
「もちろん、マックスとは母親が違うけどね」

マックスの母親は祖父とイタリアから出稼ぎに来ていたメイドで、その母親が祖父との間に出来たマックスをイタリアで育て、潮時になった所で祖父から大金をせしめて売り渡したという、到底考えられないような事をした母親だった。

だからなのだろうか、マックスはさくらに対して『ママ、ママ〜』と言って甘える事がよくあった。

その母親とは違う、別の母親か。

「…俺が生まれたのと同じくらいで子供、という事はまた若いのにでも手を付けたのかあのジジイは?」
「違う、そうじゃないんだな…私の母親はね…」

= = = = = = = = = = = = = = = = = = = =

「アキラ〜はやくぅ〜♪」
「はやくぅ〜♪」
「はいはいι」

一足先にお風呂に入っていたジェイミーとくるみちゃんに催促されて、キッチンを片づけると風呂場に顔を出した。

「そんなの後でいいのにぃ〜」
「でも、ちょっとは片づけておかないと…」

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