《MUMEI》

「こんなこと、何人にしたの。」

不服そうなあゆまは唇の触れた場所を何度も擦る。


「遊び人みたいに言うけど、俺はそんな性欲無いからな……ただ、嗜虐心はあるのかもしれない。」

あゆまの苦悶した顔が俺を罪悪感と恍惚で歪ませる。


「ぼくも、ぼくを見て苦しそうな有志が好きだよ。……正しくは本当のぼくを知ってる有志が好きだ。
気持ち悪いぼくをどうにかできる有志が好きだ。」

あゆまも恐らくは母親を思い出すのだろう。


「あゆまは勘違いしてるよな、セックスって娯楽なんだよ。」

なにか、大罪でも犯すようじゃないか。
責任があるとしたら正しく導けなかったこっちだろ。

「それは何?」

内股の墨になぞるようなキスをする。


「娯楽のキス。」

あとは、羽を濡らして逃げれないようにする罠。


「哀れみじゃないの?」


「俺に、そういう感情を向けたのはあゆまだろ。」

あゆまは俺が今も何処かで引っ掛かり続けているあの人への気持ちに哀れんでいる。俺はそれに付け込んであゆまを引き摺ろうとしている。

「もう、忘れたい……。ぼく、有志を好きな気持ちだけあればいい。」

あゆまの言うように余計な私情はお互いに必要ないのだ。

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