《MUMEI》
入口
 二人は、ようやく地下鉄の入口までたどり着いた。
といっても、あの一団と別れてからは、鬼にも子にも、警備隊にも会わずに来ることができた。
初日、悲鳴が響き渡っていた町とは思えない。

今や町は荒れ果て、不気味なほど静かだ。

「ここ、だよね」
ユキナは地下へと続く階段を見つめている。
「ああ」
同じく階段の下を見つめながら頷くユウゴ。

 その階段の先には地下鉄の駅がある。
しかし、この地下は複雑に通路が張り巡らされており、おまけに狭い。
さらに、この鍵のロッカーがどこにあるのかわからない。

 もし、ここで襲われたらかなり危険だ。
それをユキナも分かっているのだろう。
ただ、じっと入口を見つめたまま動かない。

「やっぱ、どこかで待ってれば?」
気を使ってユウゴは言ったのだが、ユキナは首を振った。
「いいから、行こう」
その表情で明らかに無理をしているのがわかる。
しかし、おそらく何を言っても聞きはしないだろう。
「わかった。行こう」
ユウゴはそう言うと、深呼吸して一歩ずつ階段を降りた。
その後に、ユキナが続く。

 階段を降りるにつれて、だんだんと薄暗くなっていくのがわかる。
コー、コーと流れる空気の音が気味悪く響いている。

ユウゴは天井を見た。

いくつか、電灯が点いていない。
よく見ると所々、破壊されているようだ。

つまり、すでにここで一騒動あったということか。
ということは、まだ何者かが潜んでいる可能性が高い。

 二人はゴクリと唾を飲み込み、慎重に足を進めていった。

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