《MUMEI》

「あの時と、一緒、だ。あの時見た、あの色と……!」
益々その身体は震えを増していってしまう
畑中へと縋り付き、我を忘れ泣く事を始めた小林
その様に、流石畑中も宥めてやる他ない
「和泉。大丈夫だから、落ち着きなさい」
「行くな、よ。もう、何処にも……!」
一人遺されてしまう事への恐怖
ソレが一体どれほどのものなのかは、畑中には想像もつかない
だが小林の様子に、ソレが相当なモノだっただろう事が容易に想像が出来た
「……ごめん、ごめんなさい、謝るから……!」
いい子にするから置いて行かないでほしい
畑中へと縋り付いたまま
小林はそれまで押し殺してきた感情を一気に吐き出してしまうかの様に泣きじゃくる
畑中はそんな小林を引き離すでもなく、されるがままで
泣き疲れ、畑中の腕の中で小林が寝入ってしまうまでそのままにさせてやった
「……恐がらせたな。悪かった」
小林を抱え上げ、居間のソファへ横たえてやり
そうして漸く穏やかになった寝顔に畑中はどうしてか安堵の溜息をつくと
出掛けるのか、そのまま外へ
取り敢えずは気分転換に散歩でも、と歩き始めた矢先の事だった
猛スピードで走り去っていく車が畑中の横を通り過ぎて行ったのは
砂埃を派手に上げるその車を
はた迷惑なソレだと一瞥し、畑中はまた前を見据える
このまま知人の営んでいる喫茶で茶でも、と
畑中はそこへと歩く事を始めたのだった……

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