《MUMEI》 朝小鳥の声が聞こえる。 うっすらと目を開けると、 朝日が差し込んで来て目が染みた。 朝だ。 「……ん…。」 ようやく目を全開にし、 体を伸ばそうと腕を上げた。 アレ? 腕が誰かに当たる。 ん? 誰か? 慌てて首を捻ると、 将貴の胸板があった。 規則正しい寝息と比例して、 体が微かに上下に動いている。 手を当てた所から直に熱が伝わり、 慌てて手を放した。 更に頭の回転を早くするにつれて、 自分の状態を理解していくと…。 将貴に腕枕をしてもらっている状態だった。 それに…。 近い! 幾度も似たような経験をしてきたくせに、 相変わらず動揺を隠しきれない。 由里香は暫くベッドの上でもぞもぞと動いていた。 「あーもう動くなよ。」 すると目は閉じたままだが、 不機嫌そうな声色でそう言い、 将貴は由里香を抱き締めた。 由里香の頭が、将貴の胸板に当たる。 前へ |次へ |
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