《MUMEI》
紙飛行機と空
通勤途中朝ごはんを買いにコンビニに行くと、いつも食べているツナのサンドイッチが売り切れていたので、仕方なくサンドイッチマンが載っている雑誌を買った。お笑いはほとんどみない。頭がピスタチオのような彼らの話をたのしむ感性は僕にはないのである。会社に着いて数ヶ月前から窓際にうつったデスクに座ると、今日もその窓に飛び降り自殺の女がうつっていたので、今日も晴れだなと思った。買った雑誌をひろげると、一ページ一ページが紙飛行機となって部屋を飛び回った。いつも目が乾き気味の部長に怒られたので、僕は紙飛行機たちを集めて屋上へ持って行った。空は舞台背景のように青く、僕は胸いっぱいに抱えていた紙飛行機を飛ばした。紙飛行機たちは自由に舞って、「いっしょに飛ぼうよ」と誘ってきたけれど、仕事があるからと断った。すると紙飛行機たちはキツネのように目を釣り上がらせて怒り、僕を屋上から突き落とした。重力に逆らうことなく通勤ラッシュを終えた道路へ落下していきながら、今日の空は青いなと思っていると、急に赤い色に変わったので、やっぱり今日の空は舞台背景だったんだと僕は気付いた。

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