《MUMEI》

実際には、足許が無くなったのではなく、吹き飛ばされていた。自分のいた場所が、真っ暗だったのに突然白くなった。しかし、それ以外の視覚要素が無いために上下左右の感覚はほぼ無い。

足許の地面が無くなったと誤認識した明智は、受け身を取ることも出来ず、強かに地面(と思われる場所)に背中を打ち付けた。

むせ返りながら、明智はしばらく背中を中心に痛む身体と戦うことしかできない。

衝撃が、山男と明智の2人のいた場所の足許から出てきたため、山男と離される形に飛んでいたらしく、山男が遠くで呻き声をあげながら痛みを堪えているのがかすむ視界の先に見えた。

「…ぐっ…なんだ、くそ、はぁ…いってー」

悪態をつぶやきながら、なんとか、仰向けだった身体を横に向ける。地面から背中を離したことでわずかに痛みが和らぐ。大きなため息をついてから力を入れるために閉じていた目を開けて、もう一度山男の方を見た。

一瞬痛みを忘れて目を瞬かせる。

「…誰?」

明智の小さな呟きが聞こえたらしい。

明智と山男の丁度真ん中辺り、おそらくさきほどまで2人がいた場所に、水色の肩に掛かる長さの髪を軽く束ねた男がいた。

そして、明智の方を見て、至極嬉しそうに笑う。

「みーーっけ♪」

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