《MUMEI》

全身が不安と恐怖で粟立つ。向けられているのは笑顔なのに。

声で、山男がその男の存在に気付いたらしく、さきほどまで呻いていたとは思えない早さで起きあがる。

「水色の髪の毛っ…ジェイ…」

顔を明智に向けたまま、水色髪は山男の言葉にあからさまに気に入らないという顔をした。

「おいこら、人の名前を適当に当てやがって。失礼なやつめ。俺の名前はジェイオルだ!少しは知っていそうだなお前。やっぱ俺って有名?…でも、まぁ、成熟したスレシルに用は無い。」

やはり山男を見ることなく明智を見据えると、一瞬の不機嫌など忘れたかのように再び笑う。

「未熟なスレシル。あまり買い手が多いわけではないが…俺は運が良い。なぁ?わかるだろうこの意味!成熟したスレシルさんよ!」

興奮気味にそこまで言うとジェイオルは山男を振り返る。

「ん?お前見たことあるな。」

山男の顔を見たジェイオルは、途端に声のトーンを落として身体も山男側へ半分向ける。

「なんで知ってるスレシルがこんな所にいるんだ?今まで見つけたスレシルは、出会ったところから順に捕まえてきたってのに。」

「…」

問いかけとも、独り言とも取れる言葉に対して、山男は何も返さず、ただジェイオルを睨み付けている。

「…あぁ、お前あれだな、サプリの所のリキだな。俺の唯一の汚点!」

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