《MUMEI》
マイゴノオオカミ
間一髪。

叶恵は横飛びし、獣のように四つん這いの姿勢で土に指を食い込ませることで勢いを殺した。

「ガルゥゥゥ」

飛びかかってきたその狼は次の攻撃体勢に入る。

叶恵は立ち上がり、得物を構えずに目を閉じて言った。

「光!」

そのときだ。
叶恵の影から一人の少女がでてきてその華奢な足から想像できない程、力強く地を蹴り叶恵のすぐ横を長い金髪がかすめた。

「ガウゥ!」

白い狼が向かってきた少女に真っ向から飛びかかる。

少女が空中で片足を狼の頭部(頬)に当てた。

少しの間、まるでスローモーションのように見えた。
しかし、それは錯覚であって次の瞬間には、狼は少女の尋常ではない力の空中回し蹴りを食らい地面にたたきつけられた。

砂埃が立ち、身動きのしない狼の周りにはクレーターができている。

数瞬遅れて、少女 光は着地した。

人を二人乗せても余裕そうな大きな狼をなんなく潰した光はそれでも何もなかったように叶恵の横を通り過ぎる。

すれ違いざまに光に狼の安否を確認したがやはり口を開かず
ただただ無表情な瞳で叶恵を見据えるだけで叶恵の影に帰って行った。

さて、狼は生きているのだろうか?

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