《MUMEI》
狼少女と偽狐
紀羅はもう倒れてはいなかった。
林の中でそっと息を殺す。

どうやら、あの大剣を背負った少女は紀羅の意に応えてくれたらしい。
はたまた、もう一人の怪異をよっぽど信用しているのだろう。

怪異の主人であろう少女からは妖獣の匂いがした。
かなり薄いが、十分にその匂いは紀羅を殺気だたせた。

だから、少しは同じ獣の言葉を理解してくれるだろうと賭けてみた。

その結果、彼女は引き受けてくれた。


栢を・・・守って・・。


きっと彼女はあの黒い竜巻の中で栢を守ってくれている。

今、自分にできるは戦ってくれている彼女たちを乗せて走れるほどの体力を温存しておくことだけだ。

狼は白い毛を林に沈ませた。

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