《MUMEI》 友達「?」 二人が竜巻の中に入ってしばらくした頃だ。 突然、オーダが攻撃をやめた。 「どうしたんだろう?」 「栢、私の近くに・・・なるべく近くに寄って。」 「え?」 狼が大きな耳をぱたりと震わせて、首をかしげる。 「今のうち、一気に片を付ける。・・・でも私の近くにいないと巻き添えをくらうかもしれない。相手に背を向けられる今しかないんだ。・・・早く。」 栢は、人の姿に戻って叶恵の背中に自分のそれを合わせてきた。 オーダの大群は、まだ叶恵たちを浮かせている。 叶恵は、静かに唱え始めた。 栢はその唄のような呪文と共に神経を研ぎ澄ます。 栢は、叶恵が今しかないと言った意味が今分かった。 唄は長く叶恵は息を上げながら、その呪文に全神経を注いでいる。 ざわざわと、耳障りな音が叶恵の唄をかき消す。 (早く・・・叶恵) その時叶恵の目が見開かれ、いままで静かで鮮麗な声で唄っていたのとは真反対の怒号に似た声で叫んだ。 「地獄の大蛇よ!恨みを地獄の炎で燃やしつくせ!!!!!!」 「−−−−−!!!」 悲鳴が聞こえた気がした。 「きゃっ・・・!?」 オーダが消滅していくと同時に、叶恵と栢を浮かせる風がなくなり二人は落下する。 栢はそこでまた狼の姿になり、叶恵を乗せて見事に着地した。 上空では、炎蛇がすでにオーダを燃やしつくしていた。 「光!!他のオーダは?」 光は空の向こう、もう何もいない空の彼方を指差した。 「逃げたの?」 こくりと小さくうなずく光。 「そんなの・・・あり得ない・・・。」 意思が、脳が、心がないのに。 「・・・ふにゃら?」 (あ・・・れ・・?) だんだん、周りがぼやけていく。 視界がぐわりと、一回転してそのまま・・・ バタン・・・。 叶恵はそのまま意識を失った。 前へ |次へ |
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